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どせいたんさき。

ナスダヨー

地震予知検証サービス『ハザードラボ』についてちょっと調べてみた


Facebook のタイムラインに流れてきたので調べてみました.


運営しているのは 株式会社アース・サイエンティフィック というベンチャー企業です.起業したのは 2012 年の 10 月 1 日だそうです.こちらでも確認しました.最近ですね.主な事業内容としては『自然災害情報関連のニュース配信ならびにシンクタンク』が記載されていました.プレスリリースやメディア掲載情報がまだ全然記載されていないところがまさにできたて感を醸し出しています.

地震予測情報について

地震予測の結果は『地震予測情報一覧|地震予測検証 / 防災情報 Hazard Lab【ハザードラボ】』というページにまとめられています.だいたい 10〜17 日あたりの幅を持って予測しているようです.また,地域についてもかなりざっくりしています.マグニチュード 5 以上の地震を対象にしているようです.週 2 回くらいのペースで動画のニュースも配信しているようです.

果たして地震予測はどの程度当たっているのでしょうか?結果は『地震予測結果検証|地震予測検証 / 防災情報 Hazard Lab【ハザードラボ】』というページにまとめられています.当たっているかどうかの基準は以下で定めているようです.

① 日本付近で実際に発生したM5.0以上の地震について対比を行なった。
② 「M5クラス」との予測情報はM5.0以上M6.0未満の発生事象と対比する。
③ 「M6以上」との予測情報はM6.0以上の発生事象と対比する。
④ 予測期間については、予測情報が新規に発表されてから終了するまでの期間とする。
⑤ 予測地域については地図上で表示されたエリアとする。

地震予測結果検証|地震予測検証 / 防災情報 Hazard Lab【ハザードラボ】

集計期間: 2012年10月17日~2013年2月28日 の結果によると 67 件の地震に対して 27 件の予測成功という結果になっています.なお, 1 つの予測期間中に複数の地震が起きた場合には個々に予測成功としてカウントしています.まだまだ運営期間が短いので,この先サンプル数が増えるともう少し信頼できる確率が出てくるのではないかと思います.

地震予測の方法について

地震予測なんて出来っこない……という話をよく聞きますし,同じ大学内にもそういうことを言っている教授の方がいらっしゃいます.ハザードラボについて最初に聞いたときにはまず「新手の疑似科学系ビジネスか?」などと疑いました.

調べてみるとハザードラボ自体は地震予測を行なっておらず,地震解析ラボという産学連携の研究プロジェクトで得られた結果を地震予測情報としてハザードラボが発信しているということでした.研究には電気通信大学千葉大学,中部大学が参加しています.主なメンバーはここで確認できます.地震解析ラボが発表した過去の予測情報はここから参照することができます.

地震計を設置して揺れの詳細を計測する研究では既に起こってしまった地震について知ることはできますが,予測のために必要な情報を得ることは困難です.また,こうした手法では地震の発生に対して年スケールの長期的な予測はたてられるかもしれませんが,実生活で役に立つような予測をすることはまず不可能です.

地震解析ラボが地震予測に用いている手法は『地震電磁気学』というものだそうです.物が壊れるときには光や電流を発することがあります.地震が発生する前に地面を流れる電流(地電流)に何らかの異常が発生するならば,それを短期的な地震予測に使えるかもしれません.果たして国際的にどの程度認められているかは知りませんが,地震が発生する 1 ヶ月から 2 週間程度前に地電流が異常値を示したということが実験的に確認されているようです.上記の内容については地震解析ラボの特別顧問についている上田誠也氏が 2007 年に学士会会報に投稿した記事を参考にしました.しかし,地電流の計測はノイズの影響を強く受けます.特に電車の運行によって深刻な影響を受けるため,人がほとんど住んでいない地域でしか地電流の計測はできません.そこで,地震解析ラボでは地電流を直接計測するかわりに地球の電離層の変化や地磁気の変化, GPS 信号の変化を利用します.地下で大規模な電流の変化が起これば,大気高層の電離層にも影響を及ぼす可能性があります.しかし,この手法で地震が予測できるということが確立されているわけではありません.地震解析ラボは地震電磁気学を地震の短期予知という観点から研究し,地震予測ができるかどうかを検討するためのプロジェクトだと捉えたほうがよいでしょう.上田誠也氏の記事にもまだまだ研究が必要であるということが記述されていました.

震電磁気学的手法については問題がないわけではありません。もう時間もなく詳しいことは申し上げられませんが、問題は山積です。だからこそ研究、それも「基礎研究」が必要なのです。そもそもどうして地震の前に信号がでるのか? なぜ地震の前に信号が出て、地震のときには観測されないのか? 実験室的検討が決定的に不足しています。また、どうして地下から高周波の変動が減衰せずに出て来られるのか?さらにもっと大規模な問題としては、地震の前になぜ100キロメートルも上空の電離層まで変化するのか?有望なモデルや仮説は提出されてはいますが解決はしていません。

¾åÅÄÀ¿Ìé¡ÖÃÏ¿ÌͽÃ覵æ¤ÎÎò»Ë¤È¸½¾õ¡×¡Ã³Ø»Î²ñ²ñÊó 2007-IV No.865

まとめ

以上,ざっと『ハザードラボ』について調べてみました.ハザードラボが発信している情報は『地震解析ラボ』という産学連携研究に基づいたものです.地震解析ラボとは地球の電気的な変化を用いて,地震の短期予知が可能かどうかを検証するプロジェクトです.現段階では地震解析ラボ,およびハザードラボで公開されている情報は地震予測として用いてもいいほど精度が高いものであるとは思えません.一方で,手法そのものが疑問視されるようなトンデモな内容でもなさそうです.将来的にはおもしろい結果を生むかもしれません.日本にはこんな研究をやっている人たちがいるということを覚えておいてもいいのではないでしょうか.